86th 関西学院グリークラブリサイタル
4年連続で聴く関西学院グリークラブのリサイタル。昨年は大阪のフェスティバルホールで開催されたが,今年は以前のように兵庫県立芸術文化センターに戻る。結論から言うと,こちらのホールのほうが聴きやすかった。ホールのサイズや反響が合っているのだろう。まさにホームグラウンド。
パンフレット,ほぼ全ページがカラーで後述の特集ページもある,読み応えたっぷりの豪華版。なぜか日本音楽著作権協会の許諾番号を印刷した紙が挟まれていた。
まずA SONG FOR KWANSEIだが,人数が65-66名。人数減ったのか危惧したが,第1ステージが選抜メンバー?による演奏のため,少なかっただけ。力みがあるのか少し硬かったけど,声量たっぷりに演奏された。声づくりの方向性が少し変わったのか?
第1ステージ 「三つの男声合唱曲 作品13」 作曲:Hugo Wolf 指揮:本山秀毅
例年通り,客演の本山先生が振られるステージから。昔で言えば林雄一郎先生のステージに相当し,海外のオーソドックスな合唱曲を端正な演奏で聴かせてくれる。今回は後期ロマン派として Hugo Wolfの作品が取り上げられたが,彼の曲で組まれたステージはほとんどないのでは*。
* 私が知っている範囲では,1976年に東京大学音楽部コール・アカデミーが「アイヒェンドルフの詩による6つの宗教的無伴奏合唱曲(マックス・レーガー編曲)」「祖国のために (Dem Vaterland)」が取り上げられて以来。
ドイツ語の子音と母音のバランスが良く,息の使い方が上手いため硬さが取れ,言葉が美しくハーモニーにくるまれて流れていく。気持ちのよい演奏だった。
もっとも,本山先生の指揮には読み取っておられる音楽がきっちり現れているようで,客席から見ていても意図がある程度読み取れる。この「ビジュアル」に演奏が助けられているところがあるかもしれない。
第2ステージ 「男声合唱組曲『柳河風俗詩』」 作詩:北原白秋 作曲:多田武彦 指揮:村上拓也
多田先生が亡くなられた今年度に,処女作が取り上げられたのは奇遇(コール・セコインデも演奏した)。そして,パンフレットには「追悼 作曲家・多田武彦先生」として2ページの特集があり,多田氏との関係や関学グリーによる多田作品の演奏記録(リサイタル及び東西四大学での)がまとめられた。
学生指揮者による演奏は,「往年の関学トーンを目指しつつ,新しい表現ができれば」の言葉通り,日本で最古の合唱組曲の一つに現代の感性で切り込んでいた(特に「柳河」の終末部)。関学グリーの多田作品と言えば北村先生が示された「一つの完成された型」があり,そこから抜けるのは大変だろう。
ベースをいつもより厚めに歌わせていたのは,「往年の関学トーン」ファンには嬉しかったけど,ところどころアンサンブルが乱れたのは残念でした。なかなか,むつかしいところ。ここからは約80名の演奏。
第3ステージ 「Barbershop Showtime!」 指揮:広瀬康夫
広瀬先生が指揮する関学のバーバーショップ,約80名が歌い踊るさまは,照明校歌も相まって,楽しくないはずがない。理屈抜きに楽しめた。プログラムには載っていないマイケル・ジャクソンのThrillerがアンコール的に歌われたのも良かった。広瀬先生まであんな格好になるとは。。
第4ステージ 「Robert Shaw Choral Series」新月会・高等部グリークラブ合同 指揮:広瀬康夫
第4ステージのRobert Shaw,昨年の「なにわコラリアーズ」でも取り上げられていたけど*,戦後の男声合唱は彼が編曲した世界の民謡・黒人霊歌・シーシャンティをレパートリーとすることで,自分達だけでなく観客にも楽しんでもらえる演奏スタイルを身につけてきた。今となっては,やや演出過剰な古いスタイルの編曲だと思うが,楽しめるのは確か。今回は,「シーシャンティ」から2曲,「世界の民謡」から2曲,「米国の歌」から2曲。大人数男声合唱の迫力あるステージでした。
* https://ameblo.jp/tonotono-57-oboegaki/entry-12272526202.html
第5ステージ 「男声合唱組曲『ティオの夜の旅』」 作詩:池澤夏樹 作曲:木下牧子 ピアノ:細見真理子 指揮:村上拓也
男声版を生で聴くのは初めてだったけど,面白く聴けました。関学の演奏でいつも感心するのは,学生指揮者が振っても(失礼な表現だけど)日本語表現に違和感を覚えることがほとんどないこと。アンサンブルの揃い方と何か関係あるのでしょうか。言葉を放り投げないところが共通点。あと,速いパッセージでもきちんとハモらせるのは,バーバーショップで鍛えられているからでしょうか。「祝福」の「魂の壺に」のハーモニーは,もう一息膨らんでほしかった。
アンコールは,次の4曲。
本山先生 MendelssohnのTrinklied
広瀬先生 And Can It Be (作曲: Thomas Cambell)
村上拓也さん 三善晃編「唱歌の四季」より「夕焼け小焼け」
岡田俊典さん U Boj!
なにはともあれ,関学のU Boj!は凄い。U Boj!の古い形を伝承しているのだから*,もう日本の合唱曲と言っても良い気がする。これを聴いて今年度の定期演奏会を聴き収めできるのは幸せ。
* https://male-chorus-history.amebaownd.com/posts/1332525
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